とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
私のカミングアウトの時よりも、ザワザワと騒がしくなる詰所内の状況にゴクリと息を呑む。
「ちょっと、皆落ち着いて…!兄さん、団長なんだからなんとかしてよ!!」
「え!?お、俺…?えーっと、おい。お前ら少し静かに…!」
と、アンやハロルドがたしなめてくれるも、彼女たちの言葉は届いていないようで、その場は全く収集がつかなかった。
予想以上の困惑ぶりに内心慌てて、横に立つロイを見据える。
しかし、彼は楽しげにクスリと微笑むだけ。
ど、どうするの?この状況…。
私が頭を抱えた、その時――。
「…でもさそれって、フローラは同意してねーんだろ?」
私達の後方から聞こえてきた聞き覚えのある声に、先ほどまで余裕綽々だったロイの肩が少し揺れたのがわかった。
「キース…」
ポツリとこぼれた私の言葉。
声がする方向へ視線を向けると、ジッと私とロイを見つめて佇むキースの姿があった。
「…へぇ?キース来たんだ。ショックで寝込んでるのかと思ってたよ」
クルリと振り返り、笑顔で対応するロイ。
あいかわらずな物言いに私をはじめ、他団員たちも固唾をのんで見守っている。
「ふっ。そういうシェスこそ、嫌がる女を無理やり婚約者にする趣味があるなんて思わなかったぜ?」