とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「嫌がるだなんて人聞き悪いなぁ。それに、これは俺たちの家同士の問題なんだ。部外者は口挟まないでくれる?」
「家同士の問題ねぇ。じゃあ、なんでフローラは俺やアンに助けを求めたんだろうなぁ。つか、そもそも単純にお前との婚約が嫌だって思ってるのいい加減、気づけよ」
「何…?もしかして、キース。俺にケンカ売ってる?勝てたためしないんだからさ。やめといたほうがいいんじゃない?」
「ハッ!いつも勝たせてやってるだけだっつーの。俺が本気出せばお前なんか簡単に倒せる」
「へぇ?じゃあ、試してみる?」
「上等じゃん。表出ろよ」
ピシッ。
普段の軽口のように淡々と交わされる2人のやりとり。
しかし、そこには糸をピンと張り詰めたような緊張感が漂っていて。
「……ッ」
ただならぬ空気に、誰もロイとキースをとめることができないでいた。
すると。
「ほら、そこまで…!2人ともちょっとこっち来い」
まさに一触即発の状況だった2人の間に、ハロルドが割って入る。
さすが、団長。
こういう時は頼りになる。
「チッ…」
「……」
舌打ちをするキースと、黙り込むロイを横目に。
「それと…。フロイ…じゃなかった。フローラもこっちに来てくれるか?」
と、ハロルドが私にも声をかけてきた。