とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「…わかりました」
コクリと頷き、私は素直にハロルドの指示に従う。
不服そうにしつつもなんだかんだ団長であるハロルドの言うことをきくキースと、いつもの涼し気な表情を浮かべるロイがそのあとに続いた。
…キース、まだ昨日のこと怒ってるわよね?
チラリと横目でキースに視線を向けてみたが、全くこちらを見ようとしない彼に内心深いため息をこぼす。
やっぱりキースに恋人役なんて頼むんじゃなかった…。
ううん。そもそも、しっかり説明してから協力してもらうべきだったのよ。
年齢が近いこともあり、昔からよく一緒に剣の練習をしてきた私たち。
騎士団員の中で誰と仲が良いかと聞かれれば、私は真っ先に2人の名前をあげるだろう。
けど、途中加入の私よりも付き合いが長いロイとキースの間には、私なんかじゃ計り知れない強い絆があるように感じていた――。
『キース、まだまだそんなんじゃ俺には勝てないよ?』
『うるせぇな!今に見てろよ。絶対、シェスに勝ってやるからな!』
よくケンカもしていたけれど、お互いのことを認めあっていて。
口は悪いがキース自身、ロイのことを本当の兄のように慕っていることは私も気づいていた。
だからこそ、今回、私の浅はかな行動をきっかけに、2人の関係を壊してしまったんじゃないか。
そんな一抹の不安が心にくすぶっていたのだった。