とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
**第10幕**三角関係なんて聞いてません
「さて、と。…3人に来てもらった理由は俺が言わなくても、わかるよな?」
真剣なハロルドの声が、室内に響く。
彼に連れられてやって来たのは執務室。
つまりは、ハロルド専用の団長室だ。
室内にある椅子に腰を掛け、ハロルドは、目の前に座るロイ、私、キースを順番に見渡す。
「…はい」
「……」
「……」
素直に答えたのは私だけで、ロイとキースは黙ったまま。
関係ないとでも言うように、無視を決め込んでいる。
「こら、そこの2人は黙り込むな。特にキース!あからさまに嫌そうな顔するなよ」
ハロルドはハァ…と深い溜め息をこぼし、おもむろに口を開いた。
「とりあえず、俺に状況を説明してくれるか?フローラが女だってことは前から知ってたけど…」
「は?団長知ってたのか…?」
ピクッとその言葉に反応したのは、目を見開いたキースだ。
「一応な、俺とアンは本人から聞いてて知ってたよ。といっても、最初に会った時は俺も気づかなかったけどなぁ。今後、騎士団として活動していくうえでは全員に隠すのは厳しいだろうし、フローラもそう思って俺達に話してくれたんだと思うぞ。まぁ、さっきの騎士団員の反応を見ると、ちらほら気づいてる奴らもいたみたいだけど」
「…クスッ。つまり気づかないほうが少数派ってことだよ」
ハロルドに続いて、ロイが口を挟む。
その言い方はまるでキースを煽っているように聞こえて、私は若干その場の空気が悪くなるのを感じていた。