とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「シェス…いや、もうシェラード公爵と呼んだほうがいいか?」
真剣な表情で悩むハロルドに対して。
「…ハァ。やめてくださいよ。今さら団長にそんな堅苦しい感じで呼ばれるの気まずいので…。シェスでも、ロイでも好きに呼んでください」
と苦笑いを浮かべロイは、優しい口調で声をかける。
たしかに私もハロルドから「キャンベル公爵令嬢」なんて呼ばれるのは、なんだか気恥ずかしい感じがするので今まで通りに呼んでほしいと言うロイの気持ちはわかった。
「…わかった。じゃあ、今まで通りシェスって呼ばせてもう。えー。コホン。…いいか?今からは騎士団団長として言わせてもらうが…シェス、お前は昔からひと言多い!だから、キースとケンカになるんだからな」
ビシッとロイに向かって、ハロルドかそう言い放った瞬間。
「あ、団長言い忘れてました。一応、俺、仮にも貴族なんですよね。だから、今の発言って他人に聞かれたら不敬罪になるかもなので、気をつけたほうがいいですよ?」
ニコッと爽やかに悪魔の笑みを浮かべるロイ。
「…っ!?ちょ、それ後出しだろ!そもそもさっき堅苦しいの嫌だとか、名前で呼んでいいって言ったのお前だろ!?」
「不敬罪」という言葉を聞いて、青ざめるハロルドは私たち以外の誰かに聞かれてないかとキョロキョロ辺りを見回す始末。
さっきまでの威勢はどこへやら、なんとも頼りない彼の姿に私は内心頭を抱えてしまう。