とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「本当にそれだけの理由なんだか…」
え…?
不意にポツリと呟いたロイの小さな声は隣にいる私にはハッキリと聞こえていた。
驚いてロイの方を見ると、一瞬、なんとも言えない寂しそうな表情を浮かべていて目を見張る。
しかし、それもつかの間。
「キースに言われなくても、俺はフローラの意向を最大限尊重してるつもりだよ。そもそも、彼女が公爵家の生まれである限りどこかに嫁ぐ必要があるんだからね。よく知らないヤツと婚約するより知ってる俺のほうがマシってもんじゃない?」
いつもの余裕そうな笑みを浮かべ、キースを挑発する始末。
でも、たしかにロイの言う通り。
遅かれ早かれ、私にとって結婚は逃れられない運命なのだ。貴族同士の結婚なんてほとんどがその家門の利になるかどうかで判断されることが多いし。
幸せな結婚なんて、望めないのが一般的。
しかし、そんな中。
私の姉、オフィーリアは、貴族社会では珍しい恋愛結婚。
もう一人の姉、アイラも最初は婚約を嫌がっていたが、お見合いをしてみたら意気投合。最終的には幸せな結婚生活を送っている。
…私だって、姉達のような幸せな結婚に憧れが全くないわけではない。
まぁ、そんな夢物語は、はなから期待してなんかないけどね…。
フッと、内心自嘲的な笑みが溢れた時だった。
「結婚っていうなは、好きなヤツとするもんだ」
至極真面目な顔で、キースはそう言ってのける。