とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「つか、そもそも好きでもないヤツと一緒になんかいられるかっての」
腕組みをし、至極真面目な口調で呟くキースに対して、私も、ロイもハロルドさえも呆気に取られてしまった。
「いや〜…まぁ、そりゃなぁ。キースの言うことは最もなんだが、それが通れば苦労しないっつーか…」
困ったように頭をかくハロルドも、なんと返答すればいいか迷っているようでモゴモゴと口ごもる始末。
もちろん、キースのような考えは素敵だと思うし、羨ましくないと言えば嘘になる。
けど…。
「…俺もフローラも、貴族として生を受けたからには、自分たちの都合ばかりで動くわけにはいかないんだよ」
そう。私もロイも、そこまでの自由はきっと許されない。
家のために結婚し、地位を守っていくこと。
それが、公爵家に生まれた私たちの宿命なのだから――。
わかってはいたが、フッと吐き捨てるような口調のロイに、私はチクンと胸が痛むのを感じていた。
ロイだって、「婚約破棄はしない」なんて口では言いつつも、本気で私と婚約したいとは思ってないだろう。
昔なじみで、性格もよく知っているそれなりに地位のある公爵家令嬢。
それだけでも、全く知らない貴族令嬢を娶るよりロイにとっては好条件だろうし。
それにもしかしたら、私が知らないだけで誰か彼にだって想う相手がいるかもしれない。
そう考えると気分がズンと重くなる。
「…貴族社会のことなんて平民の俺にわかるわけないだろ」
「キース…」
苦虫を噛み潰したような表情で、キースは吐き捨てるようにそう言い放った。