とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
もう一度感謝の意を込めて、ハロルドに向かって頭を下げた私は、少し晴れ晴れとした気持ちで執務室をあとにしたのだった――。
****
「フローラ、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「は?俺だって話があるから待ってたんだけど」
執務室を出た瞬間、私を待ち構えていたのはロイとキース。
そして、その様子を楽しげに見守るジャックだ。
未だにバチバチ状態の2人に、私は内心大きなため息をこぼす。
「わかったわ。えーっと…。ロイ悪いけど、私、今日はキースに話したいことがあったからあなたの話はまた後日でも大丈夫?」
「くくっ。ロイ様、フラレましたね…って、いたぁ!ちょっと暴力反対ですよ!」
小馬鹿にしたように笑うジャックに、ロイの素早い拳がとんだ。あまりの早業に私はおろか、キースでさえも驚いて目を見張っている。
相当痛かったのか涙目になって文句を言うジャックを無視し、「わかった。そしたら明日、フローラの家に行くよ。いいかな?」と爽やかな笑顔で問いかけてくるロイ。
「え、えぇ…」
「よかった。じゃ俺はここで失礼するよ。ジャック行くよ」
「っと、わかりましたよ。人使い荒いんだからなぁ。じゃ、フローラ嬢、キースまた」
くるりと踵を返し、去っていく2人の背中が見えなくなった頃。
「…よかったのか?アイツの話、大事な話だったかもしれないのに…」
若干、気まずそうに声をかけてきたキース。
「いいの。それに明日私の屋敷に来るって言ってるしね」