とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
凛とした口調でそう言ってのけると、幾分ホッとしたのかキースの口角もほ少し緩んでいるように見える。
その後、広間へ戻る前に話しをしようと、私はキースを誘って訓練場へとやって来た。
訓練場といっても、だだっ広い野原といったほうが正しいかもしれない。
詰所の裏にある広い草原は、昼間は騎士団員達で賑わっているが、もう夕暮れ時なので人の気配はなかった。
「最近は来れてなかったけど、昔は3人揃えば、ここで練習してたよね」
「そうだな」
この訓練場は、私とキース、そしてロイが練習した場所で、数年前、もっと私が自由だった頃はよく剣の腕を磨くために一人でもこっそり来ていた思い出深い場所でもある。
景色は全然変わらないのに、私達の関係がこんなに変わってしまうなんてあの頃は全く予想もしていなかった。
その時、背後からザーッと強い風が吹き、草原が大きく揺れる。
まるで、私の背中を押しているかのように思えて、意を決して口を開いた。
「あの、キース…。本当にゴメンなさい。あなたには協力してもらう時にきちんと私がフロイドだって、話しておくべきだった。ううん、もっと早く打ち明けてたらよかったのかもしれないわね…」
頭を下げ、キースに向かって深々と謝罪する。
優しいキースはしないだろうが、正直どんな罵倒や嫌味を浴びせられようと、受け入れるつもりだった。
けど。
「…ハァ。もういいって。それにフローラには、フローラの事情があったんだろ?俺には貴族の事情はわからないけどとりあえず色々大変そうなの伝わってきたし」
「キース…」
「つか、今さらだけど、普通に考えて貴族の公爵令嬢が男のフリして街の騎士団に所属するなんてありえねぇよな。ま、それだけお前の剣の腕がたつってことでもあるんだろうけどさ」
ケラケラと可笑しそうに笑うキースはすでにいつも通りの調子で、彼なりに気を使ってくれているのだということが感じ取れた。