とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜

「アン!おかえり。ちょうど勤務のことで相談があってさ」

「あら、そうなの?そしたら私の部屋にいらっしゃいな。兄さんもそろそろ帰ってくると思うし」

「わかった。そしたらシェス…また今度な」

コクコクと、首を大きく縦に振った私はシェスにそう告げると、アンと共に団長室を後にする。

私の背後から「…チッ」と、彼の舌打ちが聞こえてきてきたのだが、あえて気づかないフリを貫いたのだった――。

****

「ちょっと、フロイド。さっきシェスと何話してたの?めちゃくちゃ機嫌悪そうだったわよ…?」

アンがひそっと、声を潜めて私に問いかける。

団長室から、少し離れた所にある事務所がアンが普段仕事をしている場所だ。

基本的にはアン以外は、立ち寄らない部屋なのでここでは私も素が出せる。

「いや、それが…シェスに自分も副団長なんだから、家業のこととか勤務の話は知っておいたほうがいいだろうって言われちゃって…」

「へぇ、まぁ正論ね」

「う…。でも、今更シェスに私が女であること打ち明けるのはちょっと…それにシェスに話すならキースにもってなりそうだし…」
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