とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜

気が重いせいか、執務室に近づくに連れ足が鉛のようにズンと重たくなっていくように感じた。

そんな気分の中、たどり着いた執務室の前。私は意を決してソッと扉をノックする。

――コンコン。

「お父様、フローラです」

扉の前で声をかけた私に向かって「入りなさい」と、お父様の落ち着いた声が部屋の中から聞こえてきた。

その声色はいつもよりほんの少しだけ低い…ように思う。

やっぱり、お説教ってところかしら。

「失礼します」そう言って扉を開けると、執務室の真ん中に置かれた仕事机に座るお父様の姿が視界に入った。

「お父様、執事から私のことを呼んでいると聞いて参りました。何かご用でしょうか?」

扉を閉め、父親に向かって一礼した私は、ニコッと笑顔で問いかける。

呼び出された理由の大方の予想はついているが、とにかくここはシラを切ることにした。

「…フローラ。お前を呼び出したのは先日のロイ・シェラード公爵との面会の件だ。公爵とは無事にお会いできたようだな…」

「えぇ。ロイ様はもちろん、お兄様のハリス公爵様にもご挨拶できましたわ」
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