とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜
「何か問題でも?」とでも言うように愛想を振りまく私。
そんな私とは対象的に、考え込むような神妙な面持ちで、父はジッと私を見つめる。
しかし、次の瞬間。
「…ハハッ。心配していたんだが上手くまとまったようでホッとしたぞ。昨日すぐにシェラード公爵家からもぜひ、フローラとの婚約を進めたいと使者が来てなぁ。いや〜、お前のことだから何か突拍子もないことをしでかすのではないかとヒヤヒヤしていたんだ。杞憂だったようだ」
と、満面の笑みを浮かべ、父は私にそんな言葉を言ってのけた。
「シェラード公爵家から使者が…?」
「あぁ。お前が帰ってきてからすぐだったよ。とてもフローラを気に入ってくださったようでなぁ。いやー、めでたい。これで私もようやく肩の荷が下りた気分だ」
晴れやかな顔つきの父とは相反して、私の表情は暗くなる。
昨日すぐに使者を送るだなんて仕事が早いのは認めるけど…。
っ!冗談じゃないわ。
ロイ・シェラード見てなさい。どうにかしてこの婚約をなかったことにしてやるんだから。
父の手前、最後まで笑顔を浮かべつつ、私は内心そんな野心に燃えていたのだった。