婚約者の浮気相手が子を授かったので
「アデラ様というのは、アデラ・フロイド嬢のことか?」
兄のハンネスの言葉に、ファンヌは「そうです」と答える。するとハンネスの顔も、みるみるうちに曇っていく。
「どうかされましたか。お兄様」
「いや……。アデラ嬢が、気分が優れないということで医務室を訪れて、だな」
ハンネスの歯切れが悪い。
「私が、診察をしたのだが。どうやら彼女は妊娠しているようだった……。まさか、その相手がクラウス殿下だと?」
「そうです、そうなのです。ですが、お兄様が診察したのであれば、胎児の『魔力』を感じたのではないですか?」
『魔術』を使う人々には『魔力』が備わっている。医療魔術師となれば、この『魔力』を感じ、さらに『鑑定』することができる。医療魔術師の言葉を借りるのであれば、この『魔力』は、一人一人異なった性質や特徴を持つとのこと。それでも血の繋がりがある者同士の『魔力』には共通点があるらしい。
「いや。まだ胎児の『魔力』まではわからなかったな。だから、アデラ嬢の相手がわからなかった。ただ、その相手が殿下となれば、そのうち胎児から『魔力』も溢れ出てくるだろうし、気づく者は気づくだろうな。アデラ嬢の子が殿下の子であることに」
頭が痛いとでもいうかのように額に手を当てているのはヘンリッキだった。
「この件は、陛下は……」
「はい。もちろん知りません」
兄のハンネスの言葉に、ファンヌは「そうです」と答える。するとハンネスの顔も、みるみるうちに曇っていく。
「どうかされましたか。お兄様」
「いや……。アデラ嬢が、気分が優れないということで医務室を訪れて、だな」
ハンネスの歯切れが悪い。
「私が、診察をしたのだが。どうやら彼女は妊娠しているようだった……。まさか、その相手がクラウス殿下だと?」
「そうです、そうなのです。ですが、お兄様が診察したのであれば、胎児の『魔力』を感じたのではないですか?」
『魔術』を使う人々には『魔力』が備わっている。医療魔術師となれば、この『魔力』を感じ、さらに『鑑定』することができる。医療魔術師の言葉を借りるのであれば、この『魔力』は、一人一人異なった性質や特徴を持つとのこと。それでも血の繋がりがある者同士の『魔力』には共通点があるらしい。
「いや。まだ胎児の『魔力』まではわからなかったな。だから、アデラ嬢の相手がわからなかった。ただ、その相手が殿下となれば、そのうち胎児から『魔力』も溢れ出てくるだろうし、気づく者は気づくだろうな。アデラ嬢の子が殿下の子であることに」
頭が痛いとでもいうかのように額に手を当てているのはヘンリッキだった。
「この件は、陛下は……」
「はい。もちろん知りません」