婚約者の浮気相手が子を授かったので
クラウスの父である国王であるが、外遊のため王妃を連れ立って東のシコルス王国に滞在している。つまり、クラウスとファンヌの婚約解消は、国王不在の中行われたのだ。
「陛下が不在であることを知っておりましたので、クラウス様から婚約解消を伝えられたとき、すぐに神殿に書類を提出してきたのです」
ファンヌがアデラに伝えた最後のお願い。それにはそんな意味が隠されていた。
「陛下がいらっしゃったら、婚約解消などできるはずがありませんから」
それは、国王自身がファンヌを手元に置きたいと思い、息子の婚約者にと選んだからだ。だが、クラウスは国王の思惑に気付いていないだろう。彼のことだから、適当な女性を婚約者として押し付けられたと思っているのかもしれない。
そしてファンヌの中には、クラウスに対する愛だの恋だのは存在しなかった。国王の命令だから仕方なく。両親や兄たちに迷惑をかけたくない、その一心で受けた婚約といっても過言ではないほどに。
「陛下が戻ってこられるまで、まだ二十日程あるが」
ヘンリッキの口調は重い。それはこの婚約解消が与える影響をわかっているからだろう。
「ファンヌ。君はこれからどうするつもりだ?」
「はい。学校で『研究』を続けたいと思っております。クラウス様の婚約者に選ばれてから、退学という形をとってしまったので」
「陛下が不在であることを知っておりましたので、クラウス様から婚約解消を伝えられたとき、すぐに神殿に書類を提出してきたのです」
ファンヌがアデラに伝えた最後のお願い。それにはそんな意味が隠されていた。
「陛下がいらっしゃったら、婚約解消などできるはずがありませんから」
それは、国王自身がファンヌを手元に置きたいと思い、息子の婚約者にと選んだからだ。だが、クラウスは国王の思惑に気付いていないだろう。彼のことだから、適当な女性を婚約者として押し付けられたと思っているのかもしれない。
そしてファンヌの中には、クラウスに対する愛だの恋だのは存在しなかった。国王の命令だから仕方なく。両親や兄たちに迷惑をかけたくない、その一心で受けた婚約といっても過言ではないほどに。
「陛下が戻ってこられるまで、まだ二十日程あるが」
ヘンリッキの口調は重い。それはこの婚約解消が与える影響をわかっているからだろう。
「ファンヌ。君はこれからどうするつもりだ?」
「はい。学校で『研究』を続けたいと思っております。クラウス様の婚約者に選ばれてから、退学という形をとってしまったので」