婚約者の浮気相手が子を授かったので
ファンヌがエリッサに背を向けた途端、人の気配が増えたような気がした。チラリと振り返ると、エリッサの周囲に男性が二人、女性が二人増えている。よく見なくてもわかる。あれはエルランドの二人の兄と、彼らの妃だ。
見なかったことにしようと、ファンヌは再び前を向いた。だが、右肩から熱い視線を感じる。見上げると、エルランドが嬉しそうにファンヌを見下ろしていた。
「どうか……。されましたか?」
「いや。今まで、自分の気持ちを口にするものではないと思っていたが。そういったことも必要なんだなと思っただけだ」
「そうですね。口にしないと伝わらない気持ちもありますから」
そうファンヌは口にして、ファンヌ自身もここに来てから自分の気持ちを素直に口に出せるようになっていたことに気づいた。
クラウスの婚約者として扱われるようになってからは、ファンヌも言いたいことを心の奥に閉じ込めていた。
特にクラウスやあの国王と会うときは。特に国王は『製茶』の工場に対してあれこれ口を出してきた。もっと効率的にお茶を作れないのか、人を増やせ、一日中工場を動かせ、等。それに意見するときは、心を無にして、事実だけを淡々と述べるようにしていた。感情的になっては、国王を説得することができない、工場の作業員たちを守ることができないと思っていたからだ。
見なかったことにしようと、ファンヌは再び前を向いた。だが、右肩から熱い視線を感じる。見上げると、エルランドが嬉しそうにファンヌを見下ろしていた。
「どうか……。されましたか?」
「いや。今まで、自分の気持ちを口にするものではないと思っていたが。そういったことも必要なんだなと思っただけだ」
「そうですね。口にしないと伝わらない気持ちもありますから」
そうファンヌは口にして、ファンヌ自身もここに来てから自分の気持ちを素直に口に出せるようになっていたことに気づいた。
クラウスの婚約者として扱われるようになってからは、ファンヌも言いたいことを心の奥に閉じ込めていた。
特にクラウスやあの国王と会うときは。特に国王は『製茶』の工場に対してあれこれ口を出してきた。もっと効率的にお茶を作れないのか、人を増やせ、一日中工場を動かせ、等。それに意見するときは、心を無にして、事実だけを淡々と述べるようにしていた。感情的になっては、国王を説得することができない、工場の作業員たちを守ることができないと思っていたからだ。