婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ほら。とりあえず、これでも飲め」
テーブルに広げられていた本をエルランドが片付け、テーブルの隅の方に集める。ファンヌの前の空いた場所に、お茶とお菓子を並べた。
「ありがとうございます」
ファンヌが口にすると、エルランドは満足そうに微笑んで、また彼女の隣に座った。
彼の重みによって沈むソファが、ファンヌの気持ちにもずしりと沈み込む。
腕を伸ばしてカップを手にすると、仄かに甘い香りが湯気と一緒にファンヌの口元を覆った。
「いい香りがします」
「そうだろう? これは香りを楽しむお茶なんだ。『調香』にも用いられることが多い茶葉でもある」
ファンヌはカップを傾け、お茶を一口飲んだ。香りから想像するに、もっと濃い味がするものだと思っていた。だが、微かな甘みが口の中に残る程度。
「すごく、飲みやすいです」
「そうだろう?」
エルランドは銀ぶち眼鏡の下の碧眼を、嬉しそうに細めた。
(あ……。また……)
エルランドのその表情を目にするたび、ファンヌの心はぎゅぅっと締め付けられる。
「どうかしたのか? やはり今日は変だぞ?」
テーブルに広げられていた本をエルランドが片付け、テーブルの隅の方に集める。ファンヌの前の空いた場所に、お茶とお菓子を並べた。
「ありがとうございます」
ファンヌが口にすると、エルランドは満足そうに微笑んで、また彼女の隣に座った。
彼の重みによって沈むソファが、ファンヌの気持ちにもずしりと沈み込む。
腕を伸ばしてカップを手にすると、仄かに甘い香りが湯気と一緒にファンヌの口元を覆った。
「いい香りがします」
「そうだろう? これは香りを楽しむお茶なんだ。『調香』にも用いられることが多い茶葉でもある」
ファンヌはカップを傾け、お茶を一口飲んだ。香りから想像するに、もっと濃い味がするものだと思っていた。だが、微かな甘みが口の中に残る程度。
「すごく、飲みやすいです」
「そうだろう?」
エルランドは銀ぶち眼鏡の下の碧眼を、嬉しそうに細めた。
(あ……。また……)
エルランドのその表情を目にするたび、ファンヌの心はぎゅぅっと締め付けられる。
「どうかしたのか? やはり今日は変だぞ?」