婚約者の浮気相手が子を授かったので
今日、初めて国王と目が合った。その目はにたにたと笑っている。
『何も今すぐとは言っていない。しっかりと準備をし、確実に彼女をこちらに取り戻す方法を考えろ』
クラウスは国王の言葉に、ゴクリと喉を鳴らす。
『くれぐれも、オグレン侯爵には知られないように動けよ?』
なぜですか、と言いかけて、クラウスはその言葉を飲み込んだ。
そういえばファンヌが言っていた。ファンヌは必要最小限の魔力しか保持していないが、兄のハンネスの魔力は強いということを。
――きっとお母様のお腹の中で、お兄様が全て魔力を奪っていったに違いないわ。
彼女がそんな冗談を口にしたのは、いつだったろう。
国王が懸念しているのは、ファンヌの兄であるハンネスだ。肩書は『王宮医療魔術師見習い』であったが、あの年で『国家医療魔術師』の試験に合格しているのだ。
そして、領地に戻ったオグレン一家を王都に連れ戻すことができないのは、あの領地が結界によって護られているからだ、という話も聞いた。その結界を維持しているのがハンネスだ。
さらに、王都の人々がオグレン領に流れているという話まで聞いてしまったら、気が気ではないだろう。
となれば、オグレン領にいない者を、王都に連れ戻した方がいろいろと効率的なのだ。
『何も今すぐとは言っていない。しっかりと準備をし、確実に彼女をこちらに取り戻す方法を考えろ』
クラウスは国王の言葉に、ゴクリと喉を鳴らす。
『くれぐれも、オグレン侯爵には知られないように動けよ?』
なぜですか、と言いかけて、クラウスはその言葉を飲み込んだ。
そういえばファンヌが言っていた。ファンヌは必要最小限の魔力しか保持していないが、兄のハンネスの魔力は強いということを。
――きっとお母様のお腹の中で、お兄様が全て魔力を奪っていったに違いないわ。
彼女がそんな冗談を口にしたのは、いつだったろう。
国王が懸念しているのは、ファンヌの兄であるハンネスだ。肩書は『王宮医療魔術師見習い』であったが、あの年で『国家医療魔術師』の試験に合格しているのだ。
そして、領地に戻ったオグレン一家を王都に連れ戻すことができないのは、あの領地が結界によって護られているからだ、という話も聞いた。その結界を維持しているのがハンネスだ。
さらに、王都の人々がオグレン領に流れているという話まで聞いてしまったら、気が気ではないだろう。
となれば、オグレン領にいない者を、王都に連れ戻した方がいろいろと効率的なのだ。