婚約者の浮気相手が子を授かったので
「そうやって問題を起こした者は、騎士団の方で捕らえて話を聞くわけだ。もちろん、相手に怪我をさせたり、物を壊したりした者は罪に問わなければならないしな。まあ、それでリクハルドから報告があがってきたわけだ」
 リクハルドは王国騎士団第一部隊の部隊長を務めており、第一部隊はこういった王都内の警備についたり、問題を起こした者たちから話を聞いたりするのが、主な仕事である。
「騎士団で話を聞いた者たちには共通点があり、その共通点の一つは、なぜあのような行動に出たかがわからない、と口にすること。彼らは、なぜ自分たちが暴れたのかがわからないようなのだ」
「つまり、自我を失っていると?」
 エルランドが尋ねた。
「そのようだな。それから、もう一つの共通点。それがこの薬になる」
「どういうことでしょう?」
 ファンヌも腕を組んで首を傾げた。
「薬を飲んだら、暴れたくなった。そういうことでしょうか?」
「簡単に言うと、そうなるな。これが、リクハルドからあがってきた報告書だ。こちらも参考にしながら、薬の分析を頼みたい」
「わかりました」
 こうやってファンヌは、何でもすぐに引き受けてしまう。今もエルランドが答えるよりも先に、引き受けている。
「そうか。引き受けてくれるか……」
 エルランドは答えていない。
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