婚約者の浮気相手が子を授かったので
「よし、それでいいだろう。そのまま一日置いておく必要がある」
「成分分析は、一日もかかるのですか?」
「ああ。他の薬と反応させる必要があるからな。その反応が終わるのに一日かかる。その結果を見て、どのような薬草がどれだけの割合で使われているのかを、さらに分析していかなければならない」
「うわ……。気が遠くなるような作業ですね」
「まあ。そこまできたら、それが好きな者にやらせるというのも手だが」
 オスモにはそういった作業が好きな者に心当たりはあるのだろう。
「いえ。最後までやらせてください。こういった分析をする機会は、なかったので」
「そうだな。ファンヌ嬢が、『調茶師』である以上、分析方法は覚えた方がいいだろう。今回は『薬』だったが、同じような事例がお茶で起こる可能性はあるからな」
「そうですね……。お茶の場合は、茶葉の状態とお茶を淹れた状態と、二つの方法からの分析が考えられますから……」
「ファンヌ嬢、手がおろそかになっているぞ。お茶のことを考えるのは後回し」
「あ、すみません」
 ファンヌはなんとか今日の分の作業を終えることができた。
「大先生。エルさんにこの状態の『薬』を近づけるのは危険ですよね」
「そうだな。何が使われているかわからない以上、エルとこの『薬』は距離を持った方がいいだろう」
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