婚約者の浮気相手が子を授かったので
「こういった内容が得意なのは、エルだな。まずは、分析の結果を彼に伝え、仮説を立ててもらう。その仮説に基づき実験を行うしかないな」
「実験……。どのような?」
「この薬草の中から、エルに効果のあるものがあるかどうか」
 これらの薬草を用いて、エルランドを獣化させるという実験だろうか。
 ファンヌはゴクリと喉を鳴らした。
 逆に、ここに書かれている薬草が、エルランドを獣化に導くのであれば、彼に教える必要はある。だが、この薬は今までも――。
 ファンヌの考えは、まとまらない。
「ファンヌ嬢。そろそろ昼休憩の時間だ。エルに会ってきなさい。午後の診断は私が引き継ぐから、午後からはエルと一緒に例の『薬』の解析をすすめるように。『薬』さえエルに近づけなければ、問題はないからな」
「はい……」
 わからない。それが今、ファンヌにとっては不安の原因となっていた。
 少しだけ重い足取りで『調薬室』へ向かうと、午前中の診断を終えたエルランドが笑顔でファンヌを迎えてくれた。だが、彼もすぐに気づいた。ファンヌの表情が暗いことに。
「何か、あったのか?」
 食堂に向かいながら、エルランドも怪訝そうに眉をひそめる。
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