婚約者の浮気相手が子を授かったので
臣下が言い淀んでいると、もう一つ、別の声があがった。
「陛下」
『国家魔術師』の資格を持つ男が一人、小走りにやって来て膝をついた。
「報告いたします。パドマの高等教育学校にて、転移魔法を使用した形跡がありました」
「届け出はどうした」
「出ておりません。ですから、陛下に報告をと」
「届けが出ていないのに、転移魔法だと? 違法ではないのか? 転移先を突き止め、さっさとひっ捕らえろ」
「陛下。転移魔法を用いた者が、この国の者ではない場合、違法にはならないのです」
国王の唇は震えている。
外遊から戻ってきた途端、次から次へと判明する予想外の出来事。一番の予想外は、クラウスの勝手な婚約解消だったのだが、それが全ての原因になっているようにも思えてきた。
「転移魔法を用いたのは、高等学校の教授を務めていたエルランド・キュロ。転移先はベロテニア王国」
「ベロテニアだと?」
ベロテニアは、このリヴァス王国から馬車を用いて三十日かかる距離だ。
「キュロ教授はベロテニアの出身で、国籍もベロテニアにあります。ですから、違法ではありません」
チッと国王は舌を鳴らす。なぜこのタイミングで、学校の教授が転移魔法を使い、自国へと戻ったのか。だが、彼がファンヌの師であったことに気付く。
まさか――。
「どうやら、キュロ教授はファンヌ・オグレン嬢を連れて転移したようです」
「陛下」
『国家魔術師』の資格を持つ男が一人、小走りにやって来て膝をついた。
「報告いたします。パドマの高等教育学校にて、転移魔法を使用した形跡がありました」
「届け出はどうした」
「出ておりません。ですから、陛下に報告をと」
「届けが出ていないのに、転移魔法だと? 違法ではないのか? 転移先を突き止め、さっさとひっ捕らえろ」
「陛下。転移魔法を用いた者が、この国の者ではない場合、違法にはならないのです」
国王の唇は震えている。
外遊から戻ってきた途端、次から次へと判明する予想外の出来事。一番の予想外は、クラウスの勝手な婚約解消だったのだが、それが全ての原因になっているようにも思えてきた。
「転移魔法を用いたのは、高等学校の教授を務めていたエルランド・キュロ。転移先はベロテニア王国」
「ベロテニアだと?」
ベロテニアは、このリヴァス王国から馬車を用いて三十日かかる距離だ。
「キュロ教授はベロテニアの出身で、国籍もベロテニアにあります。ですから、違法ではありません」
チッと国王は舌を鳴らす。なぜこのタイミングで、学校の教授が転移魔法を使い、自国へと戻ったのか。だが、彼がファンヌの師であったことに気付く。
まさか――。
「どうやら、キュロ教授はファンヌ・オグレン嬢を連れて転移したようです」