婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ただいま戻った」
結局、エルランドが向かった先は、王宮ではなかった。王宮の周囲は川に囲まれているが、その川を挟んで向かい側の敷地にある、白い化粧漆喰の壁に、キャラメル色のドームがある建物の方。扉を開け、エントランスへ入るとすぐに声をかけられた。
「お帰りなさいませ、坊ちゃん」
ファンヌがぎょっと目を見開いたのは、エルランドが『坊ちゃん』と呼ばれたためだ。エルランドを見上げると、彼はかっと頬を赤く染め上げていた。
「坊ちゃん。こちらのお嬢様が、奥様になられる方ですか?」
「え? えぇええ?!」
ファンヌが驚きの声をあげると、出迎えてくれた老紳士が悲しそうに目を細めた。
「坊ちゃん……」
「す、すまない。まだ、彼女には何も伝えていないのだ」
「相変わらずでございますね」
彼らの会話の意味はファンヌにはわからない。だが、エルランドがこの屋敷の『坊ちゃん』に間違いはないようだ。
「ファンヌ、紹介する。彼は執事のショーンだ。ショーン。こちらが、ファンヌ・オグレン。オレの教え子で共同研究者でもある」
「ファンヌ・オグレンです。お世話になります」
「ファンヌ。後で他の使用人も紹介する。先に、部屋に案内しよう」
「ファンヌ様には、三階の南側のお部屋を準備しておきました。坊ちゃんの隣のお部屋です」
だが、三階の南向きの部屋に魅力を感じているファンヌには、ショーンの意味ありげな口調も気にはならないらしい。
結局、エルランドが向かった先は、王宮ではなかった。王宮の周囲は川に囲まれているが、その川を挟んで向かい側の敷地にある、白い化粧漆喰の壁に、キャラメル色のドームがある建物の方。扉を開け、エントランスへ入るとすぐに声をかけられた。
「お帰りなさいませ、坊ちゃん」
ファンヌがぎょっと目を見開いたのは、エルランドが『坊ちゃん』と呼ばれたためだ。エルランドを見上げると、彼はかっと頬を赤く染め上げていた。
「坊ちゃん。こちらのお嬢様が、奥様になられる方ですか?」
「え? えぇええ?!」
ファンヌが驚きの声をあげると、出迎えてくれた老紳士が悲しそうに目を細めた。
「坊ちゃん……」
「す、すまない。まだ、彼女には何も伝えていないのだ」
「相変わらずでございますね」
彼らの会話の意味はファンヌにはわからない。だが、エルランドがこの屋敷の『坊ちゃん』に間違いはないようだ。
「ファンヌ、紹介する。彼は執事のショーンだ。ショーン。こちらが、ファンヌ・オグレン。オレの教え子で共同研究者でもある」
「ファンヌ・オグレンです。お世話になります」
「ファンヌ。後で他の使用人も紹介する。先に、部屋に案内しよう」
「ファンヌ様には、三階の南側のお部屋を準備しておきました。坊ちゃんの隣のお部屋です」
だが、三階の南向きの部屋に魅力を感じているファンヌには、ショーンの意味ありげな口調も気にはならないらしい。