婚約者の浮気相手が子を授かったので
「お荷物をお持ちします」
エルランドが一つ、ショーンが一つ荷物を持ったら、ファンヌは手ぶらになってしまった。エントランスから三階に続く螺旋階段の手すりに触れながら、ゆっくりと上がっていく。
ファンヌだって侯爵令嬢。リヴァス王国王太子の元婚約者。この屋敷がどれだけ手入れが行き届いていて、派手ではないけれど手の込んだ内装であることくらい、見ただけでなんとなくわかる。階段に敷き詰められている赤い絨毯も塵一つ落ちていない。この手すりのバラスターもねじり型で、凝ったデザインだ。職人の腕の良さがよくわかる。
「こちらのお部屋になります」
ショーンに案内された部屋は、とても日当たりがよかった。外側にある両開きの雨戸は開け放たれていて、外光を取り込み、シナモン色の床を温かく照らしていた。寝台も広く、淡いコスモス色のソファもある。
「うわぁ。素敵なお部屋……」
それはファンヌの心からの声であった。
「気に入ってもらえてよかったよ。隣がオレの部屋だから、何かあれば声をかけてくれ」
「ところで、先生。あの扉はなんですか?」
ファンヌは部屋の内扉に気が付いた。廊下に通じる扉とは違う、部屋の中にある扉。もしかして、隠し部屋だろうか。
「オレの部屋と通じている……」
「えっ。えぇええええ!」
エルランドが一つ、ショーンが一つ荷物を持ったら、ファンヌは手ぶらになってしまった。エントランスから三階に続く螺旋階段の手すりに触れながら、ゆっくりと上がっていく。
ファンヌだって侯爵令嬢。リヴァス王国王太子の元婚約者。この屋敷がどれだけ手入れが行き届いていて、派手ではないけれど手の込んだ内装であることくらい、見ただけでなんとなくわかる。階段に敷き詰められている赤い絨毯も塵一つ落ちていない。この手すりのバラスターもねじり型で、凝ったデザインだ。職人の腕の良さがよくわかる。
「こちらのお部屋になります」
ショーンに案内された部屋は、とても日当たりがよかった。外側にある両開きの雨戸は開け放たれていて、外光を取り込み、シナモン色の床を温かく照らしていた。寝台も広く、淡いコスモス色のソファもある。
「うわぁ。素敵なお部屋……」
それはファンヌの心からの声であった。
「気に入ってもらえてよかったよ。隣がオレの部屋だから、何かあれば声をかけてくれ」
「ところで、先生。あの扉はなんですか?」
ファンヌは部屋の内扉に気が付いた。廊下に通じる扉とは違う、部屋の中にある扉。もしかして、隠し部屋だろうか。
「オレの部屋と通じている……」
「えっ。えぇええええ!」