婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ファンヌ様。お肌がきめ細やかでうらやましいですわ」
 サシャは、そばかすが特徴的だが、彼女本人はそれを悩んでいるようだ。
「髪の毛も、さらっとしていて、まとめるのが難しいですね。少し、香油を使わせていただきます」
 髪を結い上げてくれたのがカーラ。彼女は、侍女頭という立場にある女性だった。ただ、最近、年のせいか肩こりも酷く、それによって引き起こされる頭痛に悩まされているようだ。
「どうか、坊ちゃまのことを、末永くお願いしますね」
 カーラにそう言われても、ファンヌには何のことやらさっぱりわからない。わかったことは、この二人がそれぞれ身体に悩みがあることくらいだ。
 彼女たちにラベンダー色のドレスを着せられ、さらさらの髪は編み込みのハーフアップにしてもらう。
 カーラに案内されて向かった先は、一階にあるサロン。こちらも日当たりがよく、庭がよく見えた。
「お待たせいたしました。ファンヌ様をお連れしました」
 既にソファに座っていたエルランドと目が合った。ファンヌは何故か恥ずかしい気持ちになった。
「ファンヌ。よく似合っている……」
 そのような言葉をエルランドからかけてもらえるとは思ってもいなかったため、余計に顔が火照ってしまう。
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