婚約者の浮気相手が子を授かったので
「なるほど。やはり王宮管理の薬草園ですから、勝手に薬草持ち出すのは……。良くないですよね」
「この屋敷の庭にも薬草はある。オレが『研究』のために管理していたものだ。長く不在にしていたが、オレの師もそこを利用しているから、整備は行き届いている」
「うわぁ。どうしよう。どちらも魅力的なんですが」
 王宮管理の薬草園と、この屋敷の薬草園。どちらを先に見ようかを、ファンヌは悩んでいる。
「薬草の数でいったら王宮管理だ。こちらは研究用だからな。種類としてはこちらの方が多い」
「う~ん」
 ファンヌは悩んだ。悩んだ挙句、王宮管理の薬草園を案内してもらうことにした。薬草摘みが昼前にしかいないこと。珍しくはないけど一般的な薬草が手に入りそうなこと。この庭の薬草園はいつでも足を運ぶことができること。そういった理由からだ。
「散歩してくる。朝食の時間までには戻る」
 エルランドがショーンに告げると、彼は満面の笑みで「いってらっしゃいませ」と頭を下げた。
 朝日が目に染みる。
「昨日はよく眠れたか?」
「はい。おかげさまで」
「そうか」
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