婚約者の浮気相手が子を授かったので
「薬草の香りがします。こちらの薬草は、回復の効果のあるものばかりですね」
 ファンヌが口にすると、エルランドは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。つまり、彼は喜んでいるのだ。
「さすがファンヌだな。この距離でこの香りで薬草の種類を当ててしまうとは。ここで栽培されているのは、滋養強壮剤とか栄養剤の元になるものが多い」
「こちらの薬草を分けてもらうことはできますか?」
「ついてこい」
 朝露に輝く薬草に視線を走らせながらも、ファンヌはエルランドの後をついていく。
「おはよう」
「おはようございます。エルランド様が調薬師としてこちらにお戻りになられるというのは、本当だったんですね。昔とお変わりなく、すぐにわかりました」
 腰を折って、薬草を摘んでいた年配の女性が顔をあげた。
「悪いが、その薬草を少し分けてもらえるか?」
「エルランド様からそう言われたら、私どもはお断りできませんよ。どうぞ、好きなだけ持っていってください」
 薬草摘みの女性はファンヌにも気付いたようで、ペコリと頭を下げた。
「オレの手伝いをしてくれることになったファンヌだ。これから薬草園にも顔を出すことになるだろうから、覚えておいてくれ」
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