婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ファンヌ・オグレンです。よろしくお願いします。調茶を専門としています」
薬草摘みの女性は始終ニコニコとしながら、エルランドとファンヌのことを交互に見ていた。その視線から、嫌われていないことだけは感じ取ることができて、ファンヌはほっと胸を撫でおろした。
朝の散歩の時間だけで、薬草園を全部回るというのは土台無理な話である。屋敷から一番近い場所にあったごく一部の薬草だけを見て、二人は戻ってきた。
「先生。昨日の紅茶の茶葉を分けてもらうことはできますか?」
籠に入れた薬草を愛でながら、ファンヌはエルランドに尋ねた。
「ああ。問題ない。調茶するのか? オレも飲みたい」
「はい。では食後に」
ファンヌが答えるとエルランドは嬉しそうに目を細める。その些細な仕草が、なぜかファンヌの心にズキンと突き刺さる。
「どうかしたのか?」
「いえ、お腹が空きました。先生、きちんとご飯を食べましょうね」
ファンヌは自身でもわからぬ気持ちを誤魔化すかのように、お腹を手で押さえ、空腹であることを強調する。
「そうだな。朝から歩いたから、腹が減ったな。今日は天気もいいし、庭で食べるか?」
庭でご飯。屋敷の庭には、ファンヌの見たことのない薬草も栽培されている。『研究』に用いる薬草であるなら、なおさらのことだ。
薬草摘みの女性は始終ニコニコとしながら、エルランドとファンヌのことを交互に見ていた。その視線から、嫌われていないことだけは感じ取ることができて、ファンヌはほっと胸を撫でおろした。
朝の散歩の時間だけで、薬草園を全部回るというのは土台無理な話である。屋敷から一番近い場所にあったごく一部の薬草だけを見て、二人は戻ってきた。
「先生。昨日の紅茶の茶葉を分けてもらうことはできますか?」
籠に入れた薬草を愛でながら、ファンヌはエルランドに尋ねた。
「ああ。問題ない。調茶するのか? オレも飲みたい」
「はい。では食後に」
ファンヌが答えるとエルランドは嬉しそうに目を細める。その些細な仕草が、なぜかファンヌの心にズキンと突き刺さる。
「どうかしたのか?」
「いえ、お腹が空きました。先生、きちんとご飯を食べましょうね」
ファンヌは自身でもわからぬ気持ちを誤魔化すかのように、お腹を手で押さえ、空腹であることを強調する。
「そうだな。朝から歩いたから、腹が減ったな。今日は天気もいいし、庭で食べるか?」
庭でご飯。屋敷の庭には、ファンヌの見たことのない薬草も栽培されている。『研究』に用いる薬草であるなら、なおさらのことだ。