婚約者の浮気相手が子を授かったので
「ファンヌ。ここが王宮調薬師のいる部屋だ。周りからは『調薬室』と呼ばれている。薬が必要な者たちに、それぞれの症状に応じて薬を『調薬』するのが、オレたち王宮調薬師の仕事だ。残念ながら、まだこのベロテニアには『調茶』が広まっていない。言葉を聞いたことがある、といった具合だな」
「そうなのですね。でしたら、皆さんに『調茶』を知ってもらえるように、頑張ります」
ファンヌが左手で小さく拳を握ると、エルランドは銀ぶち眼鏡の下で目を細めた。
『調薬室』の扉を開けると、そこには長椅子がいくつか並んでいた。
「ここが待合室だな。薬が必要な者たちが、ここで順番を待っている。オレの師はあっちの奥の部屋にいる。まだ時間が早いから、誰も来てないな。今のうちに師を紹介する」
待合室の正面には受付があり、その奥では白いエプロンをつけた女性が忙しなく動いていた。その女性にエルランドが声をかけ、幾言か言葉を交わす。ついでにファンヌも紹介された。
「ここが『診断室』だ。その人に合った薬を出す為に症状などを聞く部屋になる」
受付の少し離れた場所に引き戸があり、その戸をエルランドが開けた。
「お、エルじゃないか。戻ってくるとは聞いていたが、いつ戻ってきたんだ?」
戸を開けると、ゆったりとした椅子に座っている男性がいた。ラベンダーグレイの髪は少し不精に伸ばしてあるように見える。年齢はヘンリッキと同じくらいの四十代だろうと、ファンヌは思った。
「そうなのですね。でしたら、皆さんに『調茶』を知ってもらえるように、頑張ります」
ファンヌが左手で小さく拳を握ると、エルランドは銀ぶち眼鏡の下で目を細めた。
『調薬室』の扉を開けると、そこには長椅子がいくつか並んでいた。
「ここが待合室だな。薬が必要な者たちが、ここで順番を待っている。オレの師はあっちの奥の部屋にいる。まだ時間が早いから、誰も来てないな。今のうちに師を紹介する」
待合室の正面には受付があり、その奥では白いエプロンをつけた女性が忙しなく動いていた。その女性にエルランドが声をかけ、幾言か言葉を交わす。ついでにファンヌも紹介された。
「ここが『診断室』だ。その人に合った薬を出す為に症状などを聞く部屋になる」
受付の少し離れた場所に引き戸があり、その戸をエルランドが開けた。
「お、エルじゃないか。戻ってくるとは聞いていたが、いつ戻ってきたんだ?」
戸を開けると、ゆったりとした椅子に座っている男性がいた。ラベンダーグレイの髪は少し不精に伸ばしてあるように見える。年齢はヘンリッキと同じくらいの四十代だろうと、ファンヌは思った。