婚約者の浮気相手が子を授かったので
第五章
王宮での仕事を辞め、領地へ戻る決心を決めたオグレン侯爵夫妻とその息子の動きは早かった。退職の十八日前には退職届を出し、すぐさま領地にいる家令に連絡をした。
部屋の整備と空き家の確認のために。というのも、王都で雇っていた使用人たちには紹介状を書こうと思っていたにも関わらず、なんと彼らのほとんどが一緒についていきたいと口にしたからだ。領地から王都に連れていった使用人たちもいるので、王都で雇った彼らが領地に行きたいと言っただけにすぎないのだが。
まだ屋敷の部屋は余っているから彼らを受け入れることはできる。それでも今後のことを考えると敷地をいろいろといじる必要があった。
「調薬の工場が欲しいわ」
とおっとりした口調で口にするのは、『国家調薬師』の肩書を持つヒルマである。
「彼らの生活の場も準備しなければならないわよね」
「でしたら、領地内の空き家の確認をしましょう」
ヒルマの言葉をハンネスが続けた。ヘンリッキは、妻と息子の話を聞きながら、今後のことについて考えていた。
「恐らく、『製茶』の工場も必要になるだろうなぁ」
「でしたら、あなた。『調薬』の工場に併設させたらどう? あの娘の『調茶』は『調薬』が基本だから、私がみれないこともないけれど。ただ、茶葉の扱い方がわからないだけで」
「それは。『製茶』に携わったことのある者たちがいれば大丈夫だろうとは思うが……。ファンヌのことだから、その辺はきっちりと指導しているはずだ」
部屋の整備と空き家の確認のために。というのも、王都で雇っていた使用人たちには紹介状を書こうと思っていたにも関わらず、なんと彼らのほとんどが一緒についていきたいと口にしたからだ。領地から王都に連れていった使用人たちもいるので、王都で雇った彼らが領地に行きたいと言っただけにすぎないのだが。
まだ屋敷の部屋は余っているから彼らを受け入れることはできる。それでも今後のことを考えると敷地をいろいろといじる必要があった。
「調薬の工場が欲しいわ」
とおっとりした口調で口にするのは、『国家調薬師』の肩書を持つヒルマである。
「彼らの生活の場も準備しなければならないわよね」
「でしたら、領地内の空き家の確認をしましょう」
ヒルマの言葉をハンネスが続けた。ヘンリッキは、妻と息子の話を聞きながら、今後のことについて考えていた。
「恐らく、『製茶』の工場も必要になるだろうなぁ」
「でしたら、あなた。『調薬』の工場に併設させたらどう? あの娘の『調茶』は『調薬』が基本だから、私がみれないこともないけれど。ただ、茶葉の扱い方がわからないだけで」
「それは。『製茶』に携わったことのある者たちがいれば大丈夫だろうとは思うが……。ファンヌのことだから、その辺はきっちりと指導しているはずだ」