ビター・マリッジ
「最近いったいどうしちゃったんですか?」
「何が?」
幸人さんの胸に額を預けてドキドキしながら訊ねたら、彼が無感情にそう返してきた。
「だって……変です、最近の幸人さん。誕生日にこんなお花のプレゼントとか食事とか。この部屋だって……」
肩書と後継者のためだけに私のことを選んだと言っていたくせに。最近の幸人さんの言葉も行動も、それとは矛盾している。
まるで私のことを大切にしてくれているみたいで、調子が狂う。
「幸人さんは、私のことどう思ってるんですか?」
結婚してからずっと、訊きたくて訊けなかった言葉を口にする。
少し前までは、その問いに対する幸人さんの答えを聞くのが怖かった。
「お前のことなど何とも思っていない」とか「肩書だけの妻だ」とか。そんな答えが返ってくるような気がしていたから。でも今は――、それとは違う答えが返ってくるかもしれないと思える。
そっと視線をあげると、私の頭に手をのせた幸人さんが呆れたように軽く目を細めた。
「どうって。お前は俺の妻だろ? それ以外に何がある?」
幸人さんが怪訝そうに首を傾げる。