ビター・マリッジ
「初めは、ジャケットについた知らない女の人の香りが気になってたんですけど……最近は、脱ぎたてのジャケットから幸人さんの匂いがすることに安心して。つい抱きしめちゃうというか……」
「なるほど」
恥ずかしそうに告白する梨々香を見下ろし、真顔でつぶやく。
目の前の梨々香を抱き上げてキスすると、彼女の手からジャケットを奪い取って床に投げ捨てた。
「え、ゆ、幸人さん?!」
驚いてジタバタ暴れる梨々香を抱え直すと、寝室に移動して無言でベッドに下ろす。
「幸人さん?」
「ジャケットじゃなくて、直接抱かれたほうが安心できるだろ」
小さな手を握ってベッドに組み敷くと、梨々香がベッドライトだけが灯る暗がりの中でもわかるくらいに真っ赤になった。