ビター・マリッジ


「ご飯、は……?」

夕飯を食べられる状況じゃないことくらいわかっているくせに、恥ずかしさを誤魔化したいのか、梨々香がわざわざそんなことを訊ねてくる。

薄く開いた唇に触れると、梨々香の熱のこもった瞳が期待に揺れた。


「夕食は、あとでゆっくりもらう」

そう言いながら梨々香に顔を寄せると、暗がりの中で魅惑的に俺を誘う紅色に口付けた。


《完・No her, No life Ⅰ》

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