ビター・マリッジ
「幸人さん……」
顔を赤くした梨々香が、「車の中」と、俺だけにわかるように口をパクパクさせる。
目を潤ませた表情で訴えられても煽られるだけだが、そのことには気付かないらしい。
悪戯に、膝丈のスカートの裾から空いてるほうの手を入れて指先で内腿を撫でてみたら、梨々香がスカートの上から俺の手を押さえて左右にプルプルと首を振る。その表情がまた、欲情心を煽ってくる。
あぁ、早く家に帰りたい……。
薄く引き上げた唇から、ふっと息が溢れた。
《完・No her, No life. Ⅱ》