ビター・マリッジ
「梨々香」
不意に名前を呼ばれて、そっと視線をあげる。無表情な幸人さんの瞳には、僅かに呆れの色が灯っていた。
月に一度の義務すら、満足にこなせない。そんな私に呆れているのだろう。
もし幸人さんが私ではなく、姉と結婚していたら……。幸人さんはもっと、穏やかに笑うことができていたのだろうか。
月一度の決め事の日なんて作らなくても、幸せな結婚生活が送れていたのかもしれない。そう思うと、胸の奥が苦しくなる。
引き結んだままの唇をぎゅっと噛むと、幸人さんが私の顎を乱暴に引き上げて唇を塞いだ。
舐めとるようなキスをして、幸人さんが固く結んだ私の唇を開かせる。
僅かに開いた隙間から舌先を滑り込ませると、幸人さんがそこから深いキスへと持ち込んできた。
息ができなくなりそうなくらいに激しく咥内を掻き回されて、閉じていた内腿から力が抜けていく。
自由になった幸人さんの手が、その隙に内腿のあいだに伸びてきた。