ビター・マリッジ
「それで終わりか?今日はやけに積極的だったな」
幸人さんが、私の耳元でふっと息を漏らす。
揶揄うようなその言い方が、私のことを嘲笑っているような気がした。
幸人さんの腕を押し退けて、頭を起こす。
「嫌ですか?」
真顔で訊ねた私を、幸人さんが真っ直ぐに見つめ返してくる。
その瞳に、私の下手な誘惑に対する嫌悪は見られない。だけどそれと同じくらいに、私に対する熱も感じられない。
嫌悪すら感じないくらい、幸人さんは私に興味がないのだ。
「いや。悪くない」
惨めな気持ちで私が目を伏せると、幸人さんが抑揚のない声でそう言って背中を起こした。
反射的に身を引こうとすると、幸人さんが私の肩をつかむ。その瞬間、幸人さんから射抜かれそうなほどの強い眼差しを向けられたような気がして、ドキリとした。