ビター・マリッジ

「幸人さん……待っ……」

下着の横から差し入れられた幸人さんの指に、下半身がびくりと反応する。

羞恥に頬を染める私の顔を見ても、幸人さんは顔色ひとつ変えない。指が動くたびに反応して震える私を無表情で見つめながら、ふっと息を漏らしただけだった。


「月に一回のタイミングだからと、誘ってきたのはそっちだろ」

私の耳元でささやく幸人さんの声は、冷たく素っ気ない。

私を何とも思っていない幸人さんの言葉に、胸がキリキリと痛むのに、幸人さんに触れられる身体だけが熱を帯びて火照っていく。

幸人さんは、彼の膝の上で身を捩らせる私の身体を手と指で散々に弄んでから、乱れた息を漏らす私を抱き上げた。

私を軽々と寝室まで運ぶと、スプリングの良いキングベッドに乱暴におろす。

私を組み敷いた幸人さんは、最後までほとんど表情を変えることなく私を抱いた。月に一度の義務みたいに。

月に一度、幸人さんと肌を重ねる度、私の心に虚しさと哀しみが募る。

結婚して三ヶ月になる夫の幸人さんは、私のことなど微塵も愛していないのだ。

< 5 / 137 >

この作品をシェア

pagetop