ビター・マリッジ


「今日はありがとう。ラーメン、美味しかった」

「そう?お口にあってよかった」


小山くんおすすめのニンニクたっぷりのとんこつラーメンは、スープが濃くてなかなか美味しかった。

ラーメンを食べたあと、駅前まで戻ってきてホームで別れる直前。小山くんがにこりと笑いかけてくれる。


「四ノ宮さん。また飲み会するときは誘うからおいでよ。もし困ってることとか、何か話したいことがあるなら、俺でよければいつでも聞くし」

一緒にラーメン屋で並んでいるときも、ラーメンを食べているときも、私は小山くんに幸人さんの話はしなかった。

悩みごとを抱えている素振りだって見せなかった。

それなのに、私の心のうちを見透かすような小山くんの言葉にドキリとする。

同時に、ただの同僚でしかない私のことを気にかけてくれた小山くんのやさしさに、少しだけ胸が熱くなった。

幸人さんとの問題を小山くんに話すつもりはないけれど、何かあったときに相談できる場所がある。それだけでも、心が軽くなるような気がする。

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