ビター・マリッジ
「今夜は夕食も要らなかったし、私が遅く帰宅したところで困らないでしょう?私はあなたの迷惑になるようなことはしていません!後継者を作るという役目はちゃんと務めるつもりですから。だから、私がどこで誰と何してようがほっといて――」
幸人さんが、感情的に喚き散らす私の手首をつかむ。
驚いて目を見開くと、幸人さんが私の背中を玄関のドアに押し付けてきた。
「痛っ…」
つかまれてドアに縫いとめられた手を解こうと暴れていると、突然、幸人さんの唇が私の唇を強引に塞いだ。
抵抗して首を振り動かそうとすると、幸人さんの舌が入ってきて、意識がそちらに奪われる。
立ったまま、月に一度ベッドに押し倒されるときのようなキスをされて、抵抗を続けることができなくなった私の身体から力が抜けた。
膝からカクンと前に落ちそうになった私を抱きとめた幸人さんが、さっきまで私に押し付けていた唇の端を舐めて、すんっと小さく鼻を鳴らす。