ビター・マリッジ
夜遅くに帰ってきて、必要以上に感情を露わにして喚いた私のことを、幸人さんはどう思っただろう。
きっと、面倒くさいやつを妻にしたと思われたに決まっている。
ただでさえ、私は姉の代わりに彼の妻になったのに……。
今さらだけど、自分の行動を後悔した。
唇を噛むと、幸人さんの気配が一歩私に近付いてくる。
ドキッとして顔をあげると、目が少し暗闇に慣れたのもあって、幸人さんの顔がさっきまでよりもよく見えた。
「俺は梨々香の行動を縛るつもりはない。お前が言ったとおり、どこで何をしていようとお前の勝手だ」
キッパリとした幸人さんの言葉に、「お前などどうでもいい」と言われたような気がして少し悲しくなる。だけど。
「だが、さすがに深夜を跨ぐ場合はちゃんと連絡をいれろ」
幸人さんが続けて私を気にかけるような言葉をくれたから、戸惑った。また気まぐれに優しいフリなんかして……。