ビター・マリッジ


幸人さんとの婚約を受け入れた姉は、「腹の底で何考えてるのかは知らないけど、とにかく顔はいいのよね」と苦々しい表情で彼のことを評価していた。

もともと気が進まない結婚だったせいか、姉は何度かデートを重ねているはずの幸人さんのことをあまり良くは言わなかった。

私の義理の兄になるのはどんな人なのだろう。姉の話からいろいろと勝手な想像ばかりを膨らませていたのだけれど。

両家の親族顔合わせで初めて会った幸人さんは、噂で聞いていた以上に端正な顔立ちをした、素敵な人だった。

食事中は豊富な話題で両親たちを楽しませてくれたし、店のスタッフを含めた周囲への気遣いだって完璧だった。食事を終えて、日本庭園を散歩しているときも、着物の姉の手を引き優しくエスコートしてあげていた。

幸人さんとの結婚をあまり良く思わないような発言をしていたくせに、手を引かれて彼と笑い合う姉は楽しげでとても幸せそうだった。

姉はいろいろ言ってたけど、いったい何が不服だったのだろう。見た目がよくて、中身だって素敵な人との婚約が決まって嬉しくないわけがない。

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