ビター・マリッジ
私がモテないことがそんなにおかしかった……?
そりゃ、幸人さんはほっといたってモテるのだろうけど。だからって、私の真面目な話を笑うなんて失礼だ。
「モテるのは、幸人さんのほうでしょ?」
最大限の嫌味を込めてそう言うと、幸人さんがまた、ふっと息を漏らす。
「さぁ、どうだろうな」
軽く目を細めた幸人さんが、手を伸ばして私の頬に触れた。
肌に触れた氷のように冷たい幸人さんの指先に小さく震えていると、彼が私の唇に唇を合わせてきた。
予想もしていなかった幸人さんからのキスに、私は目を見開いたまま動きを止める。
幸人さんの唇が離れていくまで目を大きく開けたままでいると、それに気付いた彼が笑って小さく肩を揺らした。
今、幸人さんが私に見せている表情は、彼が姉や美人の秘書に対して向けていたような笑顔とは少し違う。
何がそんなにツボだったのかわからないけれど、幸人さんが初めて私の前で自然に笑っているような気がして。何が起っているのかわからず、茫然とした。