イシモノガタリ
一章
斎藤知子①
信号機が点滅する大都会、新宿の街を、とある会社の会社員、斎藤知子は一人寂しく歩いていた。
結婚を前提に付き合っていた相手に浮気され婚約破棄。さらに共に住んでいた家も追い出され今はネカフェ生活。家が無くなったことも会社の上司には伝えていない。
「はぁ…」
彼から貰った、濃く、そして深い、紅の炎を灯したようなルビーの指輪が、光に照らされきらきらとひかる。…まるで輝かしがったあの頃のように…
「もう一度。もう一度だけでいいの。あの頃に戻りたい。幸せだった、あの頃に。」
浮気されたって彼への気持ちは変わらないわ、そう心に言い聞かせながら車の多い信号を渡りかけた…ところだった。
耳をすませば、聞いた事のないような美しい鈴の音が聴こえてくる。からりころりと音の鳴るほうへ顔を向ければ、噎せそうな程の甘ったるい香の香りがした。
そしてそこには見蕩れるほど美しいアメシストのような瞳の背の高い一人の男性がいた。
「ようこそ、キセキ鑑定屋へ。本日はどのようなご要件でしょうか?」
結婚を前提に付き合っていた相手に浮気され婚約破棄。さらに共に住んでいた家も追い出され今はネカフェ生活。家が無くなったことも会社の上司には伝えていない。
「はぁ…」
彼から貰った、濃く、そして深い、紅の炎を灯したようなルビーの指輪が、光に照らされきらきらとひかる。…まるで輝かしがったあの頃のように…
「もう一度。もう一度だけでいいの。あの頃に戻りたい。幸せだった、あの頃に。」
浮気されたって彼への気持ちは変わらないわ、そう心に言い聞かせながら車の多い信号を渡りかけた…ところだった。
耳をすませば、聞いた事のないような美しい鈴の音が聴こえてくる。からりころりと音の鳴るほうへ顔を向ければ、噎せそうな程の甘ったるい香の香りがした。
そしてそこには見蕩れるほど美しいアメシストのような瞳の背の高い一人の男性がいた。
「ようこそ、キセキ鑑定屋へ。本日はどのようなご要件でしょうか?」