歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
     * * *

 僕はマリアン様に導かれて、生徒会室へとやってきた。クラスメイトであるローザ嬢とテオフィルも一緒だ。
 ふたりきりにならずに済んでホッとするが、ローザ嬢が遮音と侵入不可の結界を張ったことに違和感を感じた。そこまでするほどの相談内容に心当たりがない。

 側近のお役目はしばらく休んでいいと言われていたが、それでも最低限の情報は入ってくる。

「マリアン様、殿下についての相談とはどのようなことですか?」
「うふふ、ライオネル様。そう焦らないでください。今日の授業は免除するように、先生方には伝えてありますわ」
「……それは、どういうことでしょうか? それほど深刻な相談内容なら、僕ではお役に立てないかもしれません」

 ニヤリという表現がふさわしい笑みを浮かべて、マリアン様が口を開く。

「私、ライオネル様には生涯お兄様に仕えていただきたいと思っておりますの」
「もちろん、殿下が望まれるのであればそうするつもりです」
「ですけれど、今は側近の役目はお休みなさっているでしょう?」
「はい、それは——」
「ハーミリア・マルグレンの事件があったから、ですわね?」
「……はい」
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