歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

 ねっとりとした口調で絡めとるように話すマリアン様に、嫌悪感が湧き上がる。僕のリアを引っ張り出してきてなにを企んでいる?
 事と次第によっては、このまま黙っていられない。例え相手が誰であろうとリアの敵になるならば全力で抗うつもりだ。

「私は生涯、もれなくお兄様に仕えていただきたいのですわ。つまり現状では、ハーミリアさんがライオネル様のお役目の障害になっておりませんか?」
「そのようなことはございません。休暇は殿下がお決めになられたことです」
「その原因がハーミリアさんにあると言っているのです。ですから私、とてもいいことを思いつきましたの」

 うっとりとした瞳で頬を染めてマリアン様は言葉を続ける。

「ライオネル様が私の婚約者になればよろしいのよ」
「……なにを、おっしゃっているのですか?」
「ハーミリアさんと婚約解消をすれば、今のようにそばにいなくても問題はないでしょう? 代わりに私の婚約者となって、将来はふたりでお兄様を支えていきましょう」
「申し訳ないが、なにがあってもハーミリアと婚約解消はいたしません。側近の役目を果たしていないとおっしゃるなら、お役目から外してくださっても結構です」
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