歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
「クリストファー殿下。なぜ小国の伯爵令嬢でしかなないわたくしに、ここまで固執するのですか?」
「ああ、言っていなかったか? 初めて会ったあの海辺で、お前の強気な態度と他人のために怒りを露わにする姿に惚れたんだ」
「え?」
「これでも第二皇子だから、声をかければ擦り寄ってくる女ばかりだった。婚約者がいても恋人がいても、そんなのはいなかったように媚びてくる。だから本気で愛することはなかった」
「…………」
なんということだろう。
それが本心なら、今までわたくしが取ってきた行動は、物珍しさに拍車をかけただけなのでは?
「一途に婚約者を想うお前を見て、俺もこんなふうに愛してほしいと思った。だから俺はお前をなんとしても手に入れたい」
その言葉にクリストファー殿下の本心が垣間見えた。
自分を愛してほしい——その気持ちは痛いほどよくわかる。わたくしもずっとそう思ってきた。
でもそれは横から奪っても手に入れられるものではない。自分で築き上げていくものだ。
ライル様は態度こそ冷たかったけれど、行動には優しさがあふれていた。今ではそれが当時のライル様の精一杯だったと理解できる。そして、それがあったからわたくしはあきらめずに努力し続けられた。