歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
しかしどうやっても、歯が痛くて声を出せない。そこでノートとペンを取り出して、筆談することにした。
【ご心配いただきありがとうございます。実は、歯が痛くて口を開けられないのです】
わたくしの書いた文字をチラリと見て、シルビア様は保健室まで連れていってくれた。最後の最後まで「ライオネル様のためですからね!」と言っていたけど、わたくしはやっぱりシルビア様と友人になりたい。
素直じゃないのはまったく気にならないし、むしろあの必死な感じがかわいらしく見えるもの。
保健室では治癒魔法を使える先生がわたくしの状態を見てくれた。
筆談を交えて状況を伝えると、まずは治癒魔法をかけてくれる。温かな白い光に包まれて身体がぽかぽかして心地よかった。
「どう? 痛みはよくなったかしら?」
表情筋を動かそうとして、やはりズキーンと痛みが走る。
わたくしはゆっくりと顔を左右に振った。
「そう、うーん困ったわね。今使った治癒魔法より上の魔法だと、専門機関でないと受けられないわ。もしくはお屋敷に上級治癒魔法の使い手はいらっしゃる?」
「…………」
伯爵家の領地まで戻れば確かにいるけれど、この学院に通うため暮らしているタウンハウスにそこまでの治癒魔法の使い手はいない。