歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

「それでは噂に真実味を持たせるために、これからもリアをいっそう愛でるから覚悟して」
「えっ、あの甘々ライル様はもう終わりではございませんの!?」
「……例えラブラブバカップルになるという目的がなくても、僕はリアに愛を伝えるし、できることなら……ずっと触れていたい」

 頬を染めてポソポソと呟くように話すライル様が、美麗でかわいらしくて条件反射で頷いた。
 頷いてから激しく後悔したけれど、ふにゃりと笑みを浮かべるライル様に今さら嫌だなんて言い出せなかった。

「ライオネル、それからハーミリア嬢。マリアンの件では本当に迷惑をかけた。君たちが互いに深く想い合っているのはよくわかった。ここの後始末は私がつけるから、ふたりでゆっくり過ごすといい」
「殿下……このご恩は必ずお返しします」
「お気になさらないでくださいませ。わたくしはライル様さえそばにいてくだされば、それでいいのです」

 わたくしの言葉に、ライル様が嬉しそうに微笑む。これだけでわたくしの心もぽかぽかと温かくなるのだ。
 ライル様がキリッとした表情に切り替えて、王太子殿下に向き直る。

「殿下、僕はこれからも殿下に忠誠を誓います。貴方のために持てるすべての力を使いましょう」
「あ、それなんだが……忠誠は必要ない」
「どういうことですか? 僕では家臣としてお役に立てませんか?」
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