歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件

 そこで気づいたのだが、どうやら王太子殿下はシルビア様のことが好きらしい。シルビア様に向ける視線が、他の人に向けるものと明らかに違う。

 ただシルビア様は王太子殿下の婚約者候補という態度から変わりがないので、王太子殿下の恋が叶うかはわからない。卒業式のその日まで、後一年半ある。
 わたくしはシルビア様が幸せになる未来を願っていた。

「リアの手作りか……?」
「ええ、そうですわ。もしかして殿下にお出しするのに、やはり手作りではダメだったかしら? それなら、お出ししない方がよろしいですわね」
「いや、違うんだ! リアの手作りの焼き菓子を他人の口に入るのが許せないだけだ!」
「そういうことでしたの……?」

 こんな些細なことでもヤキモチを焼いてくれるライル様と、どんなに冷たくされてもあきらめなかったわたくしと、どちらの愛が重いのか。
 その結論は出ないけど、わたくしは間違いなく幸せだ。



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