歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
王族は学院の卒業パーティーまで婚約者を決められない。
もしシルビア様に王太子殿下が想いを伝えても、状況によっては結ばれない可能性がある。だから気持ちを胸に秘めたまま、タイミングが来るのを待っているというのだ。
だから、わたくしとライル様はそっと王太子殿下の恋を応援することにした。シルビア様は特に好きな男性はいないようなので、チャンスは十分にあると思う。
「それでは、ライル様も王太子殿下も衣装は当日のお楽しみということでお願いします」
そうしてわたくしたちは収穫祭の準備を着々と進めたのだった。
当日はわたくしがシルビア様のお屋敷にお邪魔して準備を整えてもらっていた。時間になれば王太子殿下とライル様が乗った馬車が迎えにくる手筈だ。警備の兼ね合いもあるので、王都の中心部までは飾りのない馬車で向かうことになっている。
「シルビア様! 本当の女神様のようですわー!! 王太子殿下がこの美しさに失神してしまわないかしら?」
「ハーミリアさんも、なんてキュートなのかしら! これならライオネル様の心に一生残るわ!」
シルビア様は月の女神アルテミスに、わたくしは魔女の使役する黒猫を模した仮装をしていた。