歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件
唯一剣は苦手だと言っているけれどそれでも平均以上だし、魔法では誰にも負けない実力の持ち主だ。幼い頃からの鍛錬の賜物か、宮廷魔道士にも引けを取らないほどの実力だ。
学院では密かにファンクラブができるほど人気があり、王太子殿下の側近として常に注目を浴びている。
つまりとんでもなく優良物件なのだ。だから婚約者のわたくしはいつも嫉妬の目を向けられ、よく陰口を叩かれていた。
陰口は当然だとして、連絡事項を伝えてもらえないとか教科書を隠されるとか、授業に差し支えるものから鼻で笑うものまで、ひと通り嫌がらせを受けてきた。
多分、巷で流行りの恋愛小説でも書いたら、いい感じに虐げられる主人公や、意地悪な悪役令嬢をリアリティにあふれた描写ができると思う。
今度、お小遣い稼ぎでもしてみようかしら?
話が逸れてしまったけど、いつも朝の馬車の中のような感じで、わたくしが話題を提供してライオネル様が視線も合わせずにひと言返すのが常だった。
ちなみに他の生徒にはごくごく普通に会話が成立しているようだ。わたくしが近くにいるとこのようになってしまうので、学院ではなるべく近づかないようにしている。そんなことでライオネル様の足を引っ張りたくはない。
わたくしはライオネル様に愛されていない、それはもう周知の事実となり浸透していた。